【親子】
通則法28条は、両性平等の観点に加えて、子の利益のために嫡出性が認められやすくなるように選択的連結を採用する。
Q.嫡出否認の準拠法をいかに決するか。
A.この点について、嫡出否認は嫡出推定と表裏一体をなすため28条によると解する。
Q.子が父母いずれの本国法によっても嫡出推定を受ける場合、嫡出否認が認められるためには、父母いずれの本国法によっても嫡出性が否認される必要があるか。
A.この点について、28条が嫡出親子関係の成立を容易にするために選択連結を採用している趣旨を鑑みて、広く嫡出推定を認めて子の福祉を実現すべきである。そこで、父母いずれの本国法によっても嫡出性が否認される必要がある。
◎非嫡出親子関係
非嫡出親子関係については、通則法29条により規定される。なお、事実主義・認知主義のいずれに基づく場合であっても、非嫡出関係の準拠法は29条1項前段により規定される。また、認知主義による非嫡出親子関係の成立については、1項及び2項において選択的連結を採用することで、認知の成立を容易にして子の利益を図っている。
Q.遺言認知の場合の「認知の当時」の意義が問題となる。
A.この点について、認知の効力が発生するのは遺言の効力の発生時であることから、先決問題として37条1項において判断した遺言の効力発生時を意味すると解する。
◎セーフガード条項
29条1項後段、2項後段は、この本国法以外が準拠法となる場合には子の本国法上の保護要件を満たすことを要求する。これは、子の利益保護のために設けられたセーフガード条項である。
Q.認知の撤回や無効、取消しの際の準拠法をいかに決するか。
A.この点について、子の利益保護という趣旨から、複数の準拠法で非嫡出親子関係が認められる場合には、そのいずれの準拠法によっても無効等の要件を満たす場合のみ認められると解する。なお、ある準拠法によれば無効であるが、他の準拠法によると取消し得るとされている場合には、取消し得るにすぎない。
◎準正
通則法30条は準正について規定する。準正が容易に成立するように選択的連結を採用する。ここにいう「要件である事実が完成した当時」とは、婚姻準正であれば父母の婚姻時、認知純正であれば認知の時点となる。なお、婚姻や認知の成立については、先決問題としてそれぞれの準拠法による。
◎養親子関係
通則法31条は養親子関係について規定する。養親子の生活は養親の本国で営まれることが多いことから、1項前段は養親となるべき者の本国法を準拠法とする。もっとも、同項後段のセーフガード条項によって子の利益保護を図っている。同条2項は、養子縁組制度は養親子関係の成立から終了までを含めて制度設計されていることが多いことから、それらを同一準拠法とする旨を定める。
Q.養子の本国法が養親の配偶者や嫡出子などの同意を要求している場合、これらの者を「第三者」(31条1項後段)に含めるか。
A.関係者全般の利害関係を調整することが養子の利益保護に資するため、含まれると解する。
Q.縁組の方法について、代行可能性が問題となる。
A.この点について、「手続きは法廷地法による」との原則から、契約型の縁組については許可審判制度により、決定型の縁組については特別養子縁組の審判により代行可能であると解する。
なお、共同縁組の場合には、養父・養母の各本国法において縁組の成立を判断することになる。そうすると、子は父母いずれかのみと養親子関係が成立する可能性があるが、その場合には公序則(42条)により、養親子関係が成立しない方の本国法の適用結果を排除することで対応する。
◎親子間の法律関係
通則法32条は親子間の法律関係について規定する。28条から31条によって親子関係が成立した場合の関係について、抵触法上の両性平等の実現及び子の福祉の観点から定める。なお、同条にいう「知れない場合」とは、父母が誰か分からない場合のことをいう。また、同条により決せられた準拠法は、身分関係と財産関係を区別することなく適用される。