【不法行為】
通則法17条以下によって定められており、各条の趣旨は以下のとおりである。
◎17条本文
社会秩序維持に加えて、被害者と加害者双方の予測可能性にとって中立的であること、連結点の確定が容易であり法的安定性に資することから、不法行為地(結果発生地)の法を準拠法とする旨を定める。なお、「債権の成立」とはふほうこういの成立要件(故意、過失、因果関係など)を指し、「効力」とは損害賠償の算定方法や請求権者を指す。
Q.結果発生地の「結果」の意義が問題となる。。
A.直接の法益侵害の結果のみを指し、二次的・派生的な損害の発生は不法行為地と密接に関連するとはいえず、被害者による恣意的な
◎17条ただし書
加害者の予測可能性を尊重する。
Q.結果発生地の予見可能性の判断基準について、当該加害者の主観を考慮すべきか、一般人を基準とすべきか。
A.この点について、「通常」との文言があり、主観的要素の主張・立証による紛争の長期化を避けるため、一般人の立場からの客観的基準によると解する。なお、予見の対象は「その地」における結果発生であり、結果発生それ自体ではない。
Q.加害行為とされる加害者の行為が複数の国で行われた場合、いずれの地の法を準拠法とすべきか。
A.主たる行為が行われた地が、より密接に関連する地として、当該地の法が準拠法となると解する。
◎20条
現代の多様な形態の不法行為に柔軟に対応するための例外を定める。以下2つは例として示されている。
①不法行為の当事者の常居所地法が同一である場合。
②当事者間の契約に基づく義務の違反により不法行為が行われた場合。
なお、「明らかに」という文言や、準拠法の安定性の観点から、上記例外に該当すれば必ずしも準拠法が変更されることにはならない。
操作も可能となるため含まれないと解する。
Q.公海上の不法行為における結果発生地法をいかに決するか。
A.この点について、「加害行為の結果が発生した地の法」(17条)は存在せず、同条は適用されない。そこで、現代の多様な形態の不法行為に柔軟に対応する趣旨から置かれた20条に基づき、最密接関係地法によると解する。具体的には、不法行為の当事者たる船舶・航空機の旗国法(衝突の場合は双方の旗国法の累積的適用)が準拠法となる。
◎21条
当事者間で判断基準を明確にすることで紛争解決に資する。なお、当事者による準拠法の変更が認められるのは「不法行為の後」のみである。これは、強い立場にいる当事者によって準拠法の変更権が濫用されることを防止するためである。
◎22条
法定地の公序を確保するために、日本法が累積的に適用される。懲罰的損害賠償などの際に適用されることが多い。
◎18条
生産物責任の特例を定める。「生産物」とは、「生産され又は加工された物」をいい、「生産業者等」には生産から販売までの流通プロセスに関与したの物を広く含む。被害者と加害者双方にとって中立かつ最密接関係地となる「引渡しを受けた地の法」を準拠法とする旨を定める。なお、「引渡」とは占有の移転を意味する(コンピューターソフトであればダウンロードを行なった地)。
◎18条ただし書
生産物が転々流通した場合に生産業者の予見可能性が害されるのを防止するため、「生産業者等の主たる事業所の所在地法」、事業所がない場合には「常居所地法」を準拠法とする旨を定める。
Q.予見可能性の判断基準が問題となる。
A.この点について、主観的要素の主張・立証による紛争の長期化を避けるため、一般人の立場からの客観的基準によると解する。なお、予見の対象は「その地」における生産物の引渡しであり、結果発生それ自体ではない。
Q.生産物の引渡しを受けた者以外の者(以下「バイスタンダー」という。)が被害を受けた場合、準拠法はいかに決するか。
A.「被害者」(18条)は原則として引渡しを受けた者を意味する。そこで、バイスタンダーが被害を受けた場合は、不法行為(17条)の問題として処理するため、当該不法行為の結果が発生した地の法によると解する。
◎19条
名誉又は信用の毀損の特例を定める。これらは被害者の常居所地において最も重大な結果が発生すると考えられ、加害者にとっても被害者の常居所地は多くの場合に認識可能であるため、その準拠法を被害者の常居所地法とする。
・名誉毀損行為…人の社会的評価を下げる行為
・信用毀損行為…人の経済的評価を下げる行為
なお、単一の加害行為で複数の法域において結果が同時発生した場合にも同様である。