【債権の移転】
契約によって発生した債権と不法行為等によって発生した債権の内容及び効果はいずれも当該債権の準拠法で定まる。ここでは、債権の移転について確認する。
債権の移転は、その発生原因たる事実の準拠法によるとされる。たとえば、保証人が保証債務を弁済した際に主たる債権が保証人に移転するか否かは、当該弁済の原因たる事実である保証契約の準拠法によって定まる。
【債権譲渡】
通則法23条は、債務者及び第三者への対抗力について、譲渡にかかる債権につき適用すべき法による旨を定める。これは、いずれの者が債務者かという問題は債権の一生の問題であるためであると解されている。同様の理由により、債権譲渡禁止特約の有効性等についても、譲渡対象債権の準拠法による。
Q.債権譲渡契約の準拠法をいかに決するか。
A.この点について、債権譲渡も債権的法律行為たる契約の一種であるから当事者自治が認められる。また、法律関係を簡明にすることで債権流通の円滑化を図る必要がある。そこで、債権譲渡契約の準拠法によると解する。
Q.担保物権などの付随的権利が債権譲渡と共に移転するか問題となる。
A.譲渡対象債権の準拠法と、付随的権利自体の準拠法の双方がこれを認める場合に限り移転すると解する。
【債権者代位】
Q.債権者代位権の成立及び効力の準拠法をいかに決するか。
A.この点について、債権者代位権の行使は第三者の利害関係に及ぼす影響が少なく、被保全債権の対外的効力の問題であるから、被保全債権の準拠法によると解する。
【詐害行為取消権】
Q.債権者取消権の成立及び効力の準拠法をいかに決するか。
A.この点について、被保全債権の対外的効力の問題であるから、被保全債権の準拠法によると解する。もっとも、受益者の保護を図る必要性から、詐害行為とされる行為の準拠法も累積的に適用すべきである。
【債権の消滅】
債権の消滅は債権の効力の問題であることから、当該債権の準拠法による。
Q.相殺の準拠法をいかに決するか。
A.そもそも、相殺の実質は反対債権を用いた弁済であり、受働債権の履行に代わるものである。また、相殺の担保的機能を考慮すると、自働債権を累積的に適用することは相殺の成立が限定されるため妥当でない。そこで、受働債権の準拠法のみによると解する。
【代用給付権】
代用給付権とは、金銭の弁済にあたり債権額を表示していた外国の貨幣での支払いに代えて内国の貨幣で弁済する権利をいう。
Q.代用給付権の準拠法をいかに決するか。
A.この点について、債務の履行に関する問題であるから履行地法によると解する。