【物権】
物件は直接排他的な支配権であるため、目的物の所在地が最密接関係地であるといえる。また、所在地法によることが実効性を確保することにも繋がる。なお、目的物の所在地とは物理駅な所在地をいう。
Q.船舶、航空機、自動車などの準拠法をいかに決するか。
A.これらの物が運行の用に供し得る状態にある場合には、その物理的な所在地は偶然的であるため再密接関係地とはいえない。そこで、かかる場合には利用の本拠地の法を「所在地法」とすべきであると解する。なお、船舶及び航空機については旗国法、自動車については登録地法による。他方、かかる場合でないときは通常の動産と同様に、物理的な所在地の法を準拠法とすべきであると解する。
Q.運送中の物の準拠法をいかに決するか。
A.この点について、物権は直接排他的支配権であるために目的物の所在地が最密接関係地であるとされるが、運送中の物の所在地は偶然的であり、物権行為の効果は仕向地への到着によって実現されることから、仕向地が密接に関連する地といえるため、市向地の法が「所在地法」として準拠法となると解する。
物件の種類や内容、効力、対象物、主物・従物の関係などに加えて、所有権の内容についても目的物の所在地法による。また、「登記をすべき債権」とは、登記によって物権的効力が認められる債権のことをいい、不動産賃借権の対抗力などが該当する。なお、当該契約自体の効力については法律行為に関する準拠法を定める7条以下による。
Q.物権的請求に関連して生じる損害賠償請求権の準拠法をいかに決するか。(先取特権、留置権など)
A.物権的請求権と密接に関連する問題であるため、通則法13条によって指定される準拠法によると解する。
Q.法定担保物権における被担保債権の準拠法をいかに決するか。(先取特権、留置権など)
A.法定担保物権は特定の債権を担保するために法により特に認められた権利であるため、被担保債権の効力とみるべきである。また、債権者に必要以上の保護を与えることは妥当ではないため、被担保債権の準拠法と当該担保物権の目的物の所在地法(13条)を累積的に適用すべきと解する。もっとも、法定担保物権の効力については、法適用の技術的困難を避けるため目的物の所在地法による。
Q.約定担保物権における被担保債権の準拠法をいかに決するか。(質権、抵当権など)
A.約定担保物件は設定契約により直接に物権が成立するため、もっぱら物権の問題である。そこで、目的物の所在地法(13条)のみを準拠法をすべきであると解する。
Q.債権質の成立及び効力の準拠法をいかに決するか。
A.債権質は物権であるが、目的物が優待物ではないためその所在地を観念することができない。また、債権質はその客体たる権利を支配してその運命に直接影響を与えるため、客体たる債権の準拠法によると解する。
【所在地の変更】
目的物の所在地が変更されても、物権の得喪について定める13条2項により、「原因となる事実が完成した当時」における「目的物の所在地法」により有効に成立した物権は存続する(不変更主義)。もっとも、その内容及び効力については同条1項により新所在地法により決せられる(変更主義)。また、変更後の所在地法に同様の物権がない場合においては、類似の物権がある場合には当該類似の物権の内容及び効力が認められる。なお、変更後の所在地において物権の効力を主張する場合には、新所在地法上の要件を充足する必要がある。
◎法律行為による物権変動
売買や贈与などの債権行為による物権変動の成立及び効力は、同条2項により、「原因となる事実が完成した当時」における目的物の所在地法が準拠法となる。また、当該債権行為が意思主義と形式主義のいずれによるかについては、その時々の目的物所在地法で物権変動が生じているか否かを判断し、生じていた場合には「原因となる事実が完成した」という要件を満たしたこととなり、その目的物の所在地法が準拠法となる。なお、物権変動については物権の準拠法によるが、その原因行為たる契約等の成立及び効力については契約準拠法が適用される。
◎法律行為によらない物権変動
時効取得、遺失物取得、無主物先占、付合、加工などによる物権変動は、これらの「原因となる事実が完成した当時」における「目的物の所在地法」が準拠法となる。
Q.総括準拠法(相続など)と個別準拠法(物権、債権、不法行為など)のいずれを優先するか。
A.個別準拠法は総括準拠法を破るという原則のもと、個別準拠法が優先すると解する。