【知的財産権】
知的財産権については、その成立・移転・効力については当該国の内国法によって定まり、効力の及ぶ範囲も当該国の領域内に限定されるという原則が広く認められている(属地主義)。また、自国の知的財産権に関する事項は他国と相互に独立する(独立主義)。
知的財産権に最も密接に関係する国は保護国であることから、準拠法は当該保護国法とされる。つまり、特許権のようにその保護のために登録を要する知的財産権は登録国法が、著作権の場合にはその利用・侵害行為が行われた国の法が準拠法となる。
Q.特許権に基づく差止請求の準拠法をいかに決するか。
A.特許権の独占的排他的効力に基づく請求であるから、保護国法、すなわち登録国法を準拠法とする。
Q.特許権に基づく損害賠償請求の準拠法をいかに決するか。
A.財産権の侵害に対する民事上の救済であるから、不法行為と法性決定し、不法行為の準拠法による。
Q.著作権譲渡の準拠法をいかに決するか。
A.そもそも、著作権はその内容及び効力が保護国の法令で定められ、排他的効力を有するため、物権の準拠法を定める13条と趣旨を同じくする。そこで、保護国法が準拠法となると解する。
Q.ベルヌ条約5条2項第3文を抵触規定と解するか。
A.そもそも、同条約の趣旨は法統一の実現にあり、加盟国の実質法を統一できない範囲についての準拠法決定方法を定める点にある。そこで、同文を抵触規定と解する。
Q.では、「救済の方法」に損害賠償請求が含まれるか。
A.この点について、損害賠償請求は財産権の侵害に対する民事上の救済の一環に過ぎないため含まれないと解する。そのため、不法行為の問題として「加害行為の結果が発生した地の法」(通則法17条)を準拠法とする。なお、差止請求は含まれる。