【離婚】
離婚について定める通則法27条は、25条を準用する。また、変更主義を採用していることから、準拠法決定の基準時は口頭弁論集結時である。なお、同項ただし書は、夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人である場合には、夫婦の最密接関係地法よりも日本法が優先する旨を定める。これは、戸籍実務の便宜を図るためである。
離婚原因や離婚の可否に加えて、協議離婚が認められるか否かや、離婚の方法(方式ではない)についても、離婚の準拠法による。
Q.離婚の方法については準拠法により決定されるとしても、その手続きの代行可能性が問題となる。
A.この点について、「手続きは法廷地法による」との原則から、離婚準拠法の趣旨及び内容から個別に検討する。具体的には、調停離婚(家事法268条)については、裁判所が当事者の合意を公証するにすぎないことから準拠外国法がそのような内容を認めている場合に代行可能である。他方、裁判所による判断において当事者の意思を勘案する程度が高い制度の場合には調停に代わる審判(家事法284条)、当事者による任意の処分を認めない側面が強い制度の場合には合意に相当する審判(家事法277条)で代行可能である。
Q.未成年である子がいる場合の、離婚に伴う親権者・監護者の決定に関する準拠法をいかに決するか。
A.この点について、離婚の準拠法(27条)は夫婦間の利害関係を中心に連結点が定められていることから、子の福祉を基準として考え、子を中心とした連結点を採用して子の利益に配慮している親子間の法律関係の準拠法(32条)によると解する。
Q.離婚の際に生じる財産関係の準拠法をいかに決するか。
A.この点について、夫婦財産制はその精算の際に現実的な意味を有するため、その重要な局面における当事者自治の尊重の観点から、夫婦財産制の問題として26条で決すると解する。
Q.離婚に伴う慰謝料請求準拠法をいかに決するか。
A.この点について、離婚そのものを原因とする慰謝料については、有責性の判断などと不可分の関係にあるため27条によると解する。他方、離婚に至るまでの個々の行為による慰謝料は、それ自体が独立した不法行為の問題であるから17条以下による。
【別居】
日本には別居についての制度が存在しないため、離婚に類似した制度として27条による。