【反致】

判決の国際的調和という趣旨から、自国の国際私法のみならず他国の国際私法も考慮する立場を反致主義という。もっとも、相手国法も反致を認めている場合には、相手国では相手国法が準拠法となり、自国では自国法が準拠法となるため、反致のみによって判決の国際的調和が図れるわけではない。

通則法においては、41条本文において「当事者の本国法によるべき場合において、その国の法に従えば日本法によるべきとき」には反致が認められる。反致が認められるのはあくまで当事者の「本国法」である場合のみであり、国籍や常居所地による場合には認めれない点に注意が必要である。

要件①:「当事者の本国法によるべき場合」
日本の国際私法によって当事者の本国法が指定される法律関係であることが必要である。該当しないものとしては、物権(13条)における「目的物の所在地法」が準拠法とされる場合など、本国法以外の準拠法が指定される場合がある。この場合に、その準拠法が当事者の本国法と同一であったとしても41条は適用されず、反致は認められない。

要件②:41条だだし書
段階的連結が採用されている法律関係(25条ないし27条、32条)の場合には、反致は認められない。これは、法が政策的に当事者に共通する最密接関係地法を準拠法として定めていることによる。

要件③「その国の法に従えば日本法によるべきとき」
「その国の法」とは本国の国際私法であり、「日本法によるべきとき」とは日本法が準拠法となる場合をいう。なお、外国法に送致する際には「本国法」に限られるが、当該外国法が日本法に反致する際には本国法に限られず、いかなる連結点によるものでも良い。

【反致の種類】

①転致
本国の国際私法が第三国を指定した場合には、「日本法によるべき場合」に該当しないため認められない。

②間接反致
本国の国際私法が第三国を指定し、当該第三国の国際私法が日本法を指定した場合には、当該第三国という「その国」の国際私法によって日本法が指定されていると解して認める見解がある。

③二重反致
本国の国際私法によれば日本法が準拠法となるところ、日本法の反致の規定を考慮して本国法を準拠法とするかについては、「その国の法」には本国法の反致の規定が含まれるため、結果として「その国の法に従えば日本法によるべきとき」に該当せず、本国法が準拠法になると解する見解がある。これは、実質的には二重反致を否定するものと考えられる。

【隠れた反致】

英米の国際私法には、身分関係については裁判管轄権が認められれば当然にその法廷地法を適用すると定めたものがある。かかる規範を、「身分関係については当事者の住所地法による」という規定が隠れていると理解し、この規定の適用によって反致が認められるという理論がある。