【権利能力】

国際私法上の権利能力は、一般的権利能力と個別的権利能力に区別される。一般的権利能力とは権利義務の主体となり得る資格のことであり、個別的権利能力とは請求権や相続権などの個別的権利を享有する資格のことである。通則法には権利能力を直接規定する条文はなく、死亡に関連する失踪宣告(6条)が置かれているのみである。

一般的権利能力については、各国において、人であれば有するものとされていることから、法の抵触が生じない。そのため準拠法を決定する必要もない。

他方、個別的権利能力については、準拠法の決定が問題となる。

【失踪宣告】

失踪宣告は国家機関による宣告であるため、まずはどの国が管轄権を有するのかを決定する必要がある。通則法6条1項は、日本が管轄権を有する場合として、①不在者が生存していたと認められる最後の時点において日本に住所を有していたとき、②不在者が日本に国籍を有していたときを定めている。

同項の趣旨は、不在者の利害関係人が日本に所在している可能性が高いことから、日本での失踪宣告を可能とすることで不在者の法律関係の処理を迅速かつ確実に行う点にある。また、同項により、日本国籍を有する者が日本に住所を有しない場合でも戸籍の整理が可能となる。なお、同項の失踪宣告の効力は不在者のすべての財産及び法律関係に及ぶ。

他方、同項に該当しない場合においても、同条2項は、①不在者の財産が日本にあるときはその財産についてのみ、②不在者に関する法律関係が日本に関係があるときはその法律関係についてのみ、例外的に日本が管轄権を有する旨を定めている。

同項の趣旨は、日本にある不在者の財産や、不在者に関連する法律関係を確定的に処理する点にある。かかる趣旨から、同項による失踪宣告の効力は、日本国内の財産及び日本に関係する法律関係のみにしか及ばない。

【失踪宣告の準拠法】

原則的管轄、例外的管轄を問わず日本法が準拠法となる。

なお、失踪宣告の取消しの審判事件の国際裁判管轄の準拠法は、手続きと密接に関連することから日本法となる(家事法3条の3)。この点について、外国における失踪宣告を日本の裁判所が取消し得るということは、その前提として当該失踪宣告を承認しているためであると解されている(家事法79条の2、民訴法118条)。