【親族関係の方式】
通則法34条は、25条以下の親族関係についての法律行為の方式について定めている。(婚姻について定める24条2項及び3項が含まれていない点に注意。)法律関係全般についての方式は10条で定められているが、34条はその特則という位置付けにあり、成立の準拠法と行為地法の選択的連結を採用することで法律行為の成立を容易にしている。なお、遺言の方式については43条2項により適用除外となる。
【その他の親族関係】
通則法33条は、24条以下に定められた親族関係以外の親族関係について定める。身分関係につき、属人法(本国法主義)を採用している。刑法における親族間の犯罪に関する特例などの際に適用される。
【扶養義務の準拠法に関する法律】
通則法43条は、夫婦、親子その他の親族関係から生ずる扶養の義務については通則法が適用されない旨を定める。扶養については、扶養義務の準拠法に関する法律で別途定められている。各条の趣旨は以下の通りである。
◎2条
扶養権利者を保護し、扶養が与えられる機会を増やす。「扶養を受けることができない」(同条1項ただし書)とは、事実上の扶養能力がない場合ではなく、法律上の扶養義務が存在しない場合をいう。なお、段階的連結を採用しているが、2項は1項において示された基準では扶養が受けられない場合のみ適用されるという補正的連結である。(通常は基準として示された法がない場合に次の段階が適用される。)
◎3条
扶養権利者の保護に偏ることがないように特別に扱うため、扶養義務者からの異議申し立ての準拠法について定める。段階的連結を採用している。
◎4条
離婚に際して統一的な処理を図るため、「離婚について適用された法」による旨を定める。
◎6条
扶養の権利を行使することができるの者の範囲及び行使期間、扶養義務の限界について定める。なお、婚姻費用の分担については通則法26条ではなく、本法によると解されている。
【相続】
通則法36条は、相続の家族法的側面を重視して属人法によるとし、相続財産の種類を問わない相続統一主義を採用する。(相続の財産的側面を重視し、相続財産の種類によって準拠法が異なるものを相続分割主義という。)
相続の原因及び時期、相続人の範囲、胎児や法人の相続能力、順位、欠格事由、排除に加えて、相続の承認・放棄、相続分、寄与分、遺留分などについても36条による。なお、遺言については、遺言という方法による意思表示の問題のみ37条が適用され(方式については遺言の方式の準拠法に関する法律による)、遺言執行人の選任や権限については相続の準拠法による。
Q.いかなる財産が相続財産を構成するかについての準拠法が問題となる。
A.財産ごとに異なる複数の法性決定は妥当ではないため、いかなる財産が相続財産になるかは相続の問題として36条で決し、個別の財産が相続により移転可能か否かは個別財産の準拠法によると解する。
Q.相続人の存在が明らかでない場合における財産の管理、清算、相続人の捜索における準拠法が問題となる。
A.不在者の財産管理に類似した問題として、財産所在地法を適用すると解する。
Q.相続人が不存在の場合の財産の帰属が問題となる。
A.そもそも、相続とは被相続人と人的関係がある者への財産の承継である。そこで、相続の問題と法性決定すべきではなく、無主物の処理の問題として扱い、財産所在地の公益と密接に関係するため財産所在地法によると解する。
Q.特別縁故者への財産分与が問題となる。
A.権利として認められた相続の問題と法性決定べきではなく、相続人不存在の場合の相続財産の処分の問題と同様に、財産所在地の公益に密接に関係するため財産所在地法によると解する。
Q.被相続人の本国法が相続分割主義を採用しており、不動産相続について不動産の所在地法によらしている場合、日本に相続財産の一部である不動産が存在していると、当該相続の一部について日本法に反致される場合がある。かかる部分反致を認めるべきか。
A.41条は明文で部分反致を否定しておらず、一部の財産について判決の国際的調和を実現できるため認めるべきと解する。
【遺言】
通則法37条は、遺言者の意思尊重の観点から、遺言者の属人法(本国法主義)を準拠法とする旨を定める。具体的には、遺言能力や遺言の意思表示の瑕疵、撤回の可否などの問題について、同条による遺言の意思表示の問題と法性決定される。成立の基準時は遺言の「成立の当時」であり、死亡時ではないことに注意が必要である。なお、遺言の撤回の方式は遺言方式準拠法3条による。
Q.前の遺言と矛盾した内容の遺言が後になされた場合の準拠法が問題となる。
A.遺言の実質的内容と密接に関連するため、その内容の準拠法、すなわち36条の相続準拠法によると解する。