【法性決定】
法性決定については条文で定められていないことから、通説に従う。通説は、法性決定は特定の国の実体法によるべきではなく、国際私法自体の立場において独自になすべきであるとする(国際私法自体説)。
国際私法自体説に立って法性決定をする際の基準は、各規定の趣旨・目的に従って判断すべきであるとされる。具体的には、①当該単位法律関係の本質的性質、②他の単位法律関係が妥当する範囲との関係、③当該法選択規則で用いられている連結政策などを基準とする。
【連結点の確定】
連結方法として、以下のものが挙げられる。
①単純連結
連結点を一つだけ採用する連結方法(通則法36条)。
②累積的連結
ひとつの単位法律関係につき複数の連結点が定められ、各連結点によって定まる準拠法が重畳的に適用される連結方法(通則法17条、22条1項)。要件が厳格になる方向に作用する連結方法であるといえる。
③選択的連結
連結すべき準拠法を複数挙げて、いずれかの要件を満たす場合にその法律関係の成立を認める連結方法(通則法28条1項)。要件が緩くなる方向に作用する連結方法であるといえる。
④配分的連結
同一の単位法律関係を複数に分け、各々について連結点を定める連結方法(通則法24条1項)。
⑤段階的連結
複数の連結点を段階的に挙げて、第一段階の連結点から段階的に補充的な連結点を定める連結方法(通則法25条)。
各種連結点の基準時は、特に規定が置かれていない場合には事実審の口頭弁論終結時であるとされる(変更主義)。他方、養子縁組については、「縁組の当時」(通則法31条1項前段)とされていることから、準拠法は当該時点における連結点によって定まるとしている(不変更主義)。
【国籍・常居所】
主な連結点①:国籍
当事者が2以上の国籍を有する場合は、確定が容易かつ明確であることから常居所の国の法を、常居所がない場合には最密接関係地法を本国法とする(通則法38条1項本文)。もっとも、日本国籍を有する者については日本法を本国法とする(同項ただし書)。
最密接関係地法の決定にあたっては、国籍取得の経緯、滞在期間、親族の居住状況などを総合的に判断する。また、国籍国以外に最密接関係地があると考えられる場合であっても、その地の法を選択することはできず、必ずいずれかの国籍国の法を本国法とする必要がある。
なお、無国籍者については本国法は存在しない。よって、無国籍者の常居所地法は25条及び32条の「本国法」には当たらず、段階的連結には適用されない(同条2項ただし書)。
主な連結点②:常居所
常居所とは、人が相当期間居住することが明らかな地をいい、居住期間や居住に至る経緯、親族の同居状況などを総合考慮して判断する。
Q.居住意思などの主観的要素を考慮できるか。
A.客観的事実で認定できるものであれば考慮すべきと解する。
【法律回避】
当事者が故意に連結点を変更し、本来適用される法規の適用を免れることを法律回避という。
Q.法律回避は有効か。
A.当事者の内心の意思の問題を考慮すると準拠法の安定性が失われるため、有効と解する。なお、対策としては不変更主義を採用することが考えられる。