【不統一法国法】
不統一法国とは、同一国家内に異なる複数の私法秩序が併存している国をいう。そのうち、地域によって適用される私法が異なる場合を地域的不統一法国といい、当該不統一法国において適用される法律を準国際私法という。他方、宗教や人種によって適用される私法が異なる場合を人的不統一法国といい、当該不統一法国において適用される法律を人際法という。
このうち地域的不統一法国においては、通則法により「本国法」が指定される場合であり、「常居所」が指定される場合には、準拠法が問題となることはない。
Q.地域的不統一法国における同一本国法(25条)はいかにして決定されるか。
A.通則法38条3項は特定の地域の法を「当事者の本国法とする」ものであるから、各当事者について同項で「本国法」を決定し、それらが同一である場合には同一本国法があるものと解する。
通則法38条3項は、間接指定主義(不統一法国における準国際私法により本国法を指定)を原則とし、直接主義(準国際私法がない場合には当事者の最密接関係地法を本国法とする)を補充的に採用している。
人的不統一法国においては、常居所などを連結点とした場合にも本国法の指定が問題となる。そこで、通則法40条1項は、原則として間接主義を採用し、「当事者に最も密接な関係がある法」を本国法とすることを定めている。なお、これは再密接関係“地”ではないことに注意が必要である。
Q.指定された国の法律のうち、どの時点での法律を適用すべきか。
A.その国の時際法によって決すべきと解する。
Q.分裂国家の国民の本国法をいかに決すべきか。
A.分裂国家を不統一法国とみて通則法38条3項による見解と、当該国家の国籍者を二重国籍者とみて同条1項による見解がある。もっとも、いずれの見解によっても最密接関係地方が本国法となる点は同様である。
Q.国際私法によって準拠法と指定される法律は、法廷地国により国際法上承認された国家又は政府の法律に限られるか。
A.国際私法は国際公法ではなく、問題となる法律関係に最も密接な関係がある地の法を適用する国内法であるから、国際公法上承認された国家又は政府の法律に限られる理由はない。また。承認の有無により準拠法が変わることは、判決の国際的調和を害する。そこで、未承認の国家又は政府の法律も準拠法となると解する。