【代理】
代理の準拠法を定める明確な規定はないため、準拠法は解釈によって定める。
Q.法定代理の準拠法はいかにして定めるか。
A.この点について、法定代理においては代理人の選択権が本人にないため、本人の利益を重視すべきである。また、代理行為の相手方の予測可能性にも配慮する必要がある。そこで、法定代理権の発生原因となった法律関係の準拠法によると解する。
Q.任意代理の準拠法はいかにして定めるか。
A.代理権の授与行為も法律行為であるから、当事者が「選択した地の法」(7条)によると解する。もっとも、代理権授与行為について独立して準拠法を選択することは一般的ではないことから、準拠法の明示の選択がない場合には、代理権授与の原因となる委任契約等の基本関係の準拠法が黙示に選択されていたものと解する。
Q.代理権の存否及び範囲についての準拠法をいかに定めるか。
A.代理権の発生は本人による受検行為に基づくことから、当該授権行為の準拠法によると解する。
Q.代理人が相手方と締結した契約(以下「外部関係」という。)の効果が本人に帰属するか否かを判断する準拠法はいかに決するか。
A.この点について、本人保護の観点から授権行為の準拠法によるという見解がある。もっとも、相手方が当該準拠法を知ることは困難であるため取引の安全を害するおそれがある。他方、相手方の予測可能性に配慮して行為地法によるとしても、本人は代理人を通じて代理行為地を規制できることから本人の予測可能性は害されない。また、代理行為地は客観的に定まり、基準として明確である。そこで、代理行為地法によると解する。
Q.外部関係の準拠法によれば代理行為が本人に効果帰属しない場合、無権代理や表見代理の準拠法をいかに決するか。
A.この点について、代理権の有無については本人が相手方に責任を負うか否かの問題であるため、いずれの場合も代理行為地法によると解する。
なお、無権代理人と相手方の関係は当該法律行為の準拠法により、本人と無権代理人の関係は授権行為の準拠法によるが、授権行為を完全に欠いていた場合には事務管理又は不法行為の準拠法によると解する。