【事務管理・不当利得】
通則法14条以下は事務管理及び不当利得の準拠法について定める。
◎14条
・事務管理…社会構成員間の相互協力関係の促進による円満な社会の実現という社会公益上の目的から、事務管理地が密接な関連を有することを定める。なお、事務管理地とは現実に事務管理が行われている場所、すなわち事務管理の客体の所在地をいう。
Q.客体の所在地が変更された場合にいかなる地の法を適用するか。
A.かかる場合においても、「原因となる事実が発生した地」に変更が生じるわけではない。また、事務管理者の恣意の抑制の観点からも、事務管理を開始した当時の法が適用され続けると解する。
・不当利得…正義公平に基づく公益目的から、利得地が密接な関連を有することを定める。
Q.(国際間の送金など、)利得と損失の発生地が異なる場合にいかなる地の法を適用するか。
A.利得者に返還義務を負わせる制度であることから、利得者に密接に関係するであろう利得の発生地の法によるべきであると解する。
◎15条
現代の多様な形態の事務管理又は不当利得に柔軟に対応する。当事者が法を同じくする地に常居所を有している場合には双方に密接に関係する法であり、その予測可能性に適うため常居所地法を準拠法とする旨を、また契約に関連して事務管理が行われた場合には当事者の合理的期待に適うため契約準拠法を準拠法とする旨を定める。
◎16条
事務管理及び不当利得によって発生する債権は公益性が強くないことに加えて、紛争解決に資するために当事者による任意処分を認めている。なお、いずれも「原因となる事実が発生した後」に限られる。